阿部サダヲにハズレなし伝説がまたも更新か?夫婦で営む、繁盛している小料理屋を火事のためすべてを失い失意の阿部サダヲに、誠実でまじめ、隠すことなく自己をさらけださす優しいジゴロの才能に気づいた妻の松たかこによって、シナリオ通りに結婚詐欺がうまく進行する。適齢期を伸ばし続ける田中麗奈、キャリアウーマン、オリンピックを目指す重量挙げアスリート、 料亭おかみ、風俗嬢、母子家庭公務員など、殺伐とした日常からちょっとした機会に、だまされた気もないのに、あるいはだまされているのに気付いているのに、それでも男から優しいことを言ってもらいたい、気にかけてもらいたい女性たちを本気にさせて、貢がさせてしまう素朴な結婚詐欺師を阿部サダヲが実にうまく演じます。
終わりごろ、秋の夕方自転車で出かける阿部を不安なものを察して妻が通りまで追いかけるシーンが、映画でよくある場面ですが切ない感じがよく出ていました。★★★★
「アポカリプト」はジャガー・バウがマヤ帝国の追っ手を全て殺して、やっと妻子と再会し、さて旅に出ようとすると、船に乗って浜に向かってくる不吉な予感のするスペイン人を偶然見かけるところで終わりました。
16世紀、ペルーに上陸したピサロ率いる十数名のスペイン人は鉄器と銃でインカ帝国を征服してしまいました。また、北米大陸もコロンブスに発見されてたちまちヨーロッパ人に植民地にされます。オーストラリア、アフリカも然り、アジア、中国も搾取されます。なぜこの400年で人類は持つ者と持たざる者に別れてしまったのか?
13,000年前、人類はアフリカで生まれ、世界に散りましたが、ユーラシア大陸にのみ恵まれた東西に延びた地形、肥沃な土壌、耕作可能な種子、家畜可能な動物、気候、後の文字の発明など幸運な偶然性により、また、中国の様に早すぎた中央集権が不可能だったり、不衛生で伝染病病原菌への免疫抵抗力を持ったヨーロッパ人によって、先住民は病気に罹って亡くなり、そのまま現在も続く不公平な社会になったというのが著者ジャレット・ダイアモンド教授の説です。
上下2巻、とにかく長い本で、2ヶ月以上かかってしまい、その間何も読めませんでした。
南米にも、アメリカにも馬はいなかった、アフリカのシマウマ、サイなどは家畜には適さない、それぞれの大陸にいた原生の大型動物は、たちまち捕獲されて毛皮や、食べられてしまったために絶滅してしまったなど、驚きの歴史書です。ナショナルジオグラフィックからDVDが出ているので見る価値大です。
大きなプロモーションや、予告編も無かったのに、思いがけず驚きのサスペンスでした。マットデイモンの「ボーン」シリーズや、月末上映の「ボーン・レガシー」とかぶるのかと思えるCIAのお尋ね者シリーズ。36カ国の保安部から指名手配を受け、人の心を操ることが得意で、殺しのプロであり、CIAをも裏切る、またCIAにも狙われるデンゼルワシントン。南アフリカが舞台であるけれど、限定されていてワールドワイドな大きさは感じませんでした。しかしストーリーはそれを問題にしないほど面白い。
MI3にもあったけれど、各国の諜報部は、何時使われるか分からない、ハイテク尋問室を持った隠れ家(SafeHouse)が世界中に置いてあるらしい。
カーチェイスのスピード感、「第九地区」ソウェトでの逃亡劇、一軒目、二軒目のセイフハウスでの銃撃音、爆発音など映画が新しくなるたびに演出が洗練され、例えばT.V.で観ていたらトイレに行く暇も無いくらい緊張感が楽しめる傑作でした。★★★★★
BrassBandのコンサートかなと思っていました。金管楽器とドラムとダンスとコーラスのコラボです。
十年以上も前からアメリカで人気の舞台で、知らないのは私だけ、有楽町の東京国際フォーラムはファンで満員でした。BlueManも良かったけれど、その数倍の迫力があります。
太鼓だけのパフォーマンス(鼓童)は観ましたが、それプラス、フルートからチューバ?までが鳴り響き、ダンスもきれいで、客を盛り上げチケットの高さも納得でした。3人の若い日本人の奏者はハイレベルで、特に日本には中高ととブラスバンド経験者はたくさんいると思いますが、ブラストは日本中を公演するので、きっとどこへ行っても大人気間違いなしでしょう。
「人類はどこから来たのか?」がキャチコピーではあるが、神は自分に似た人を創造したとの聖句を思わせる、冒頭の人間に似た宇宙人によって誕生したらしい。プロメテウス号に乗って行き着いた星にも、その宇宙人はいて、人に似ている加工物があり、しかも、生物兵器まで作って貯蔵しているという、とんでもなく悪い創造主であったのだ。生物兵器は更に極悪で人間はおろか創造主でさえも抹殺するという、バトルロイヤルなみの大騒動である。でもヒロインはアンドロイドに助けられ生き延びて脱出するお決まりです。
監督のリドリースコットは人類の誕生を描いたのでなく、30数年前のエイリアンの誕生物語を見せたかったのか?怪獣スペクタクルはハイテク技術でますます洗練されてきました。
アイスランドはいかにも宇宙の惑星と思える最高のロケ地でしょう。アンドロイドのマイケルファスペンダーは「シェイム」のセックス依存症のヒーローと同じく体温を感じさせない名演技でありました。
3Dは新作映画が出来る度に進化しているなと感じさせます。★★★★
出演作が常に良い評判の「ブルーバレンタイン」で 生活力のない、しかし現状肯定、満足なのだが、妻に捨てられる悲しい男だった「ライアンゴスリング」が、今回は寡黙でクールなお兄さん役で、影のあるヒーローになった。L.A.の砂漠の乾いた空気が感じられる画面で、顔まで怖い極悪マフィアと、好きな女を守るために痛い思いをしながら、人生ただただ不幸な方にしか進まないハードボイルドな戦いをするヴァオレンス映画。
今回もまた、バッドエンドでした。キャリーマリガンも『シェイム』で不幸な妹役を引きずり、これまた幸せになれない一生を案じさせる、演歌に出てくるヒロインのようなあたり役でした。文化村のようなところでしか上映されない感じの名作が、地元のユナイテッドシネマで観れて思わぬ拾い物でした。★★★★
もう二ヶ月も前の映画です。あまり良い映画だったので感想がまとまりませんでした。
1930年代のパリ、モンパルナス終着駅庁舎に、時計番のおじさんの後に時計台に不法在留として住着き、両親はなく学校も行かず、かっぱらいのその日暮らしの孤独な少年ヒューゴの冒険劇ですが、同時に映画を発明した「メリエス」を賞賛し、活動映画トーキーの時代、そして現代のムービーに至る歴史を教えてくれます。
まず、ヒューゴの不思議な顔。シャーロットランプリングのような、実在するのかと思う青い瞳。そして昼は暗く不潔なヨーロッパなのに、エッフェル塔が建った時代の、夜の電気がともる整然としたパリ市を俯瞰する美しさ、カラクリ人形自体にはそれほどの役割はなかったのですが、産業革命以来の、機械のメカニズムの美しさ、「戦火の馬」にもあった機械の恐ろしさを20世紀の明暗で見せます。
機械オタクのヒューゴが存在価値に悩む恋人に言う「世界が一つの機械なら、一人一人の人間も、欠かすことの出来ない大事な歯車のパーツの一個」=いらない人間なんていない。とかいう台詞に深く教えられたのでありました。
ちなみにナチス親衛隊SSの格調高い黒い制服をデザインしたのは、ドイツの『HUGO BOSS」だそうです。ナショナルジオグラフィックからの知識でした。