小野不由美 「屍鬼」

名称未設定-1.jpg 新潮文庫より文庫本長編5冊セット。オリジナルハードカバーは上下刊です。小野不由美というペンネームからして不吉なです。先週読んだ、誉田哲也の「妖の華」というデビュ-作っぽい小説が、吸血鬼物だったので、偶然にも続けて伝奇小説を読むことになりました。
 屍鬼と人間の登場人物は150人にものぼり、夫々の生い立ち、性格、家族、屍鬼になるまでの過程など人物描写が細かく、一流作家らしく物語の進行にもそつがありません。
 舞台は三方を深い樅の森林で囲まれた人口1300人の外場村(卒塔婆村)、墓地は土葬、祭は虫送りと呼ばれ、真夜中松明を持った鬼の面をかぶったユゲ衆と呼ばれる女人禁制の若衆が卒塔婆を背負って練り歩く。という横溝正史小説のようなおどろおどろしい設定です。
 現代なのだが、住人はほとんど村内で生活が完結していて、新居に越してきた住人は昼間外出することなく、出歩くとしても、夜のみといのが只者でない予感がします。
 映画トワイライトもそうだが、吸血鬼はやはり美男美女が定番なのだが、屍鬼では本家屍鬼以外はほとんど一般人でカリスマ性は薄い様だ。医者と坊主の2大主人公が変節してゆく様子が楽しく、小説中に更に小説を書いていく手法は新鮮でした。伝奇小説は入場料を払って入るお化け屋敷のようなもので、怖いもの見たさに奥へ奥へと進んで行く感覚が5冊セットで味わえるのは大変なお値打ち度でした。

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2024年4月

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